ある日、朝の散歩をしていたときのことです。
どこからか「アワアワ、アワワ」という、きいたことのない音が耳に届きました。
最初は人の声かと思いましたが、よく見ると近くの木の上にカラスが止まっていました。
そのカラスが、まるでおしゃべりしているような、不思議な声を出していたのです。
よく聞く「カァカァ」ではなく、どこかかわいらしくて、笑ってしまいそうな音でした。
その様子は、怒っていたり困っていたりするようには見えませんでした。
むしろリラックスしているように見えて、とても楽しそうでした。
こんな鳴き方にも、何かちゃんとした意味があるのでは?と考え始めました。
「アワアワ」「アワワ」って何のサイン?カラスの鳴き声にも秘密があった!
カラスはよく「カァカァ」と鳴くことで知られています。
でも実は、もっと多くの声を使い分けていることが分かってきています。
今回わたしが聞いた「アワアワ」「アワワ」という音は、聞きなれた声とは大きくちがっていました。
どこかおどけた感じで、人間の赤ちゃんの声のようにも聞こえました。
カラスは気分や状況によって、さまざまな音を使うことができると言われています。
研究では40種類以上の鳴き声を使い分けるとも言われていて、その多さにおどろかされます。
このような変わった声にも、いくつかの意味が考えられます。
鳴き声の例 | 可能な意味 |
---|---|
アワアワ、アワワ | ごきげんなとき・リラックスしているとき・遊んでいるとき |
アワァァァァ | メスがオスにエサをねだるときの甘え声 |
グルグル・カラカラ | 若いカラスの練習・その地域だけの鳴き方(方言) |
このように、カラスの声にはさまざまな感情や意味が込められていることが分かります。
日本には11種類も!都会と田舎ではカラスの性格も鳴き方もちがう?
日本には全部で11種類ものカラスが生息していることが知られています。
でも、私たちが日常で目にするのは、主に2種類のカラスです。
ひとつ目は、ハシブトガラスという種類です。
このカラスは、名前のとおり「くちばし」が太くて立派なのが特徴です。
都会に多く住んでいて、地面をぴょんぴょんとはねるように移動します。
頭もとても良くて、人の行動をよく観察しています。
ふたつ目は、ハシボソガラスです。
こちらは田舎や自然の多い地域に多く見られます。
くちばしが細長く、ゆっくりと歩く上品な印象があります。
ハシブトガラスに比べて、性格もおだやかだといわれています。
両者には鳴き声にも大きな違いがあります。
ハシブトガラスは高く響く「カァー」と鳴くことが多く、
ハシボソガラスは「ガァー」と低く濁った声で鳴きます。
カラスの鳴き声7選!あなたはいくつ分かる?
カラスはとても知能が高い鳥として知られています。
そのため、鳴き声も目的に合わせてしっかり使い分けています。
最近では、どんな声にどんな意味があるかが少しずつ解明されています。
鳴き声 | 意味 |
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カァー、カァー | 仲間とのあいさつや「ここにエサがあるよ」の知らせ |
あー、あー | のんびりしているときの、リラックスした状態のサイン |
クアッ、クアッ | 軽いけいこく。「あっち行って」のような軽めの合図 |
カッカッカッカッ | 自分のなわばりを主張。「ここはぼくの場所!」という宣言 |
グアッ(グワッ) | おなかがすいたときに出す、せつないような鳴き声 |
クワァァァァ | 恋をしているときの鳴き声。求愛のしるしとして使われる |
アワァァァァ | メスがオスに「エサちょうだい」と甘えるときに使う声 |
こうした鳴き声を聞き分けることができると、カラスの気持ちが少し分かるようになります。
聞こえてきた声に耳をすませると、今そのカラスが何を伝えようとしているのかが見えてくるかもしれません。
カラスにも「方言」!? 地域によってちがう声のバリエーション
最近の研究では、カラスの鳴き声に地域ごとの違いがあることが分かってきました。
それは、まるで人間が話す「方言」に似ています。
たとえば、東京にいるカラスと大阪にいるカラスでは、
鳴き方や音の高さ、リズムなどが少しずつ異なっていることがあります。
これは、地域の環境や仲間とのやりとりの仕方が影響していると考えられています。
また、都市部のカラスは、人の生活に合わせて新しい声を生み出している可能性があります。
「グルグル」や「カラカラ」といった、ちょっと変わった音も、その一つかもしれません。
こうした声は、もしかすると新しい「ことば」として使われ始めているのかもしれません。
まだまだカラスの「言語」は分からないことがたくさんありますが、これからの研究が楽しみですね。
カラスの観察で気をつけたい3つのこと
カラスを観察するときには、いくつかのマナーがあります。
彼らはとても賢く、人の動きをよく見ています。
観察しているとすぐに「見られているな」と気づいてしまうこともあるのです。
そこで、以下の3つのポイントを守りましょう。
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ジロジロ見すぎない:観察はほどほどに。長時間にらむように見るのはNGです。
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巣に近づかない:子育て中のカラスはとても敏感です。知らずに近づくと攻撃されることもあります。
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エサをあげない:人間がエサをあげると、自然の生活リズムがくずれてしまいます。
このように、カラスの暮らしをそっと見守ることが大切です。
おわりに:次の散歩ではカラスの声に耳をすませてみよう!
カラスはただの「黒くてうるさい鳥」ではありません。
よく耳をすませば、彼らの世界はとても豊かで、面白いことにあふれています。
「アワアワ」や「グルグル」など、変わった声もじつは意味のある“ことば”なのかもしれません。
あなたのすぐ近くで、今日もカラスたちは話し合っているかもしれません。
次に外に出かけたときには、空から聞こえる鳴き声にちょっとだけ耳をすませてみてください。
いつもの散歩道でも、ちがう景色が見えるかもしれませんよ。